イギリスで合法的に就労する場合はNational Insuranceナンバーという物をあてがわれますが、これに紐づいて所得税が計算され、労働者は給料から自動的に毎月引かれます。
自営業の方はまた計算方法が異なりますが、この記事ではイングランドで企業に雇われている労働者向けの税金の計算方法を解説いたします。
HMRCのオンラインサービス
税金の管理はHMRCという歳入税務局が行っています。
HMRCのオンラインサービスに登録すると、ウェブやアプリ上で自分の所得や税金の情報がいつでも閲覧できます。
住所変更もオンラインサービスを通して簡単に行えるので、登録することを強くお勧めします。
また、何か税務情報に問題を発見した場合、このオンラインサービスを通してHMRCに連絡することが可能です。
Tax Year
Tax Yearというのは税年度で、4月6日から翌年の4月5日までとなっています。
この間に取得した所得に対して、1年間の税金が計算されます。
Personal Allowance(控除額)
2022年〜2023年度のPersonal Allowance(控除額)は£12,570となっています。
つまり、これ以上稼いでいない場合には所得税は支払わなくて済みます。
£12,570を超えて稼いだ金額に対して所得税20%が課せられます。
ちなみに£50,270を超えて稼いだ金額に対しては40%、£150,000を超えた金額に対しては45%の税金を徴収されます。
控除額やレートは毎年変わる場合があるのでその税年度のものを政府のサイトにてご確認ください。
Tax Codes(タックスコード)
一つの仕事につきそれぞれTax Codeが割り振られます。
1つの会社で働き、benefitやその他の控除を申請していない場合は、「1257L」というTax Codeです。
2つ以上の会社で仕事を掛け持ちしている場合は、それぞれの仕事に対して異なるTax Codeが割り当てられます。
また、このコードから毎月給料から差し引かれ始める金額を知ることができます。計算方法は後述します。
このTaxCodeの数字は年間の控除額を表しています。
そしてアルファベットはあなたに適応される控除の種類を表しています。
Tax Codeのアルファベットの種類に関しては以下の政府のページで確認することができます。
税金の計算方法
月毎の計算方法
仕事が1つの場合
仕事を1つしかしていない場合は通常「1257L」のタックスコードとなります。
年間の個人控除額は£12,570であり、"L"は通常の個人控除が適応されていることを表しています。
一月毎に給料から引かれる税金を計算する際は以下となります。
£12,570÷12ヶ月=£1,047.50
つまり月に£1,047.50を超える金額に対して、税金が引かれます。
例えば、月の所得が£1,200の場合、月の給料から引かれる税金は以下になります。
月収£1,200-月毎の控除£1,047.50=£152.50
£152.50が課税対象となり、
£152.50×20%=£30.50
この月に差し引かれる税金は£30.50になります。
仕事を掛け持ちしている場合
仕事を2つ掛け持ちしている場合は、2つTaxCodeが付与されているはずです。
例えば、仕事Aが「330L」、仕事Bが「926T」だったとします。
"T"は他の仕事の税金と紐づけられていることを表しています。
例えば、仕事Aで£400、仕事Bで£800の収入があったとします。
仕事A・TaxCode: 330L
この場合、年間で£3,300を超える場合に税金が課されることを表します。
£3,300÷12ヶ月=£275
なので£275が月の控除額となり、これを超える金額に対して、税金が引かれます。
月収£400-月毎の控除£275=£125
£125が課税対象となり、
£125×20%=£25
この月に仕事Aから差し引かれる税金は£25になります。
仕事B・TaxCode: 926T
この場合、年間で£9,260を超える場合に税金が課されることを表します。
£9,260÷12ヶ月=£771.67
なので£771.67が月の控除額となり、これを超える金額に対して、税金が引かれます。
月収£800-月毎の控除£771.67=£28.33
£28.33が課税対象となり、
£28.33×20%=£5.67
この月に仕事Aから差し引かれる税金は£5.67になります。
結果2つの仕事からこの月に差し引かれる税金は、
仕事A£25+仕事B£5.67=£30.67
となります。
年間の計算方法
通常のPersonal Allowance(控除額)は一律年間£12,570なので、1つの仕事をしていても仕事を掛け持ちしている場合でも最終的には同じ税金を払うことになります。
例えば、年収が£14,000の場合、
年収£14,000-控除£12,570=£1,430
£1,430が課税対象となります。
£1,430×20%=£286
なのでこの年の所得税は£286になります。
もし、年収が控除額の£12,570以下である場合は、所得税を支払う必要がありません。
例え毎月給料から引かれた場合でも、翌年には払った所得税が返ってきます。
Tax Refund
今年度の所得税は翌税年度の6月から10月の間にHMRCによって自動的に計算されて、過不足がある場合は、追加の支払い/払い戻しの手続きの案内がきます。
この案内はP800と呼ばれる手紙で、HMRCのシステム上で登録されているあなたの住所に届きます。
税金過払いだった場合は、そのP800と同時かあるいは少し後に過払い金額分の小切手が送られてくるので、ご自分の銀行口座に入金してください。
小切手の入金は利用している銀行によりますが、オンラインサービスを提供している銀行であれば、アプリから撮影して読み込み、入金できる場合があります。
ちなみにLloyds Bankはアプリから入金できます。
アプリで小切手を入金できない場合は、直接銀行の支店に訪問する必要があります。
もし、税金を過払いしているにもかかわらずP800の手紙が来ず、Tax Refundを翌年の11月になっても受け取れない場合は、オンラインからTax Refundの申請を行えます。
オンラインでのTax Refundのやり方は以下の記事を参考にどうぞ。
まとめ
タックスコードを見れば年間の控除額が分かり、それをもとに月毎の控除額も分かります。
仕事を掛け持ちしている場合や月によって収入に差がある場合でも、最終的に年間の税金が計算されて、税金を払いすぎている場合は翌税年度に返ってきます。
HMRCによって自動的に計算されるとはいえ、自分で計算して間違いがないか確認したほうが良いです。
また、職場の経理が杜撰な場合は差し引かれる所得税やNIの金額が間違っている場合もあるので、毎月Payslip(給料明細)を確認してください。
イギリスでは結構お金関係がルーズな企業が存在します。
ちなみにNIの計算方法については以下の記事を参考にどうぞ。